【目的】標識放流したウナギ群の資源特性値の近似値を得て、資源評価と管理方策に資するとともに、一代回収型放流と再生産期待型放流の両方に適用可能な最適放流方策を探ることが目的である。 【方法】高知県物部川の河口から上流約3km地点で、2000年5月に右胸鰭を切除したウナギ(00年群)を7977尾を、また2001年5月に左胸鰭を切除したウナギ(01年群)を7989尾を放流した。これらの標識ウナギと天然ウナギの生残・成長過程を追跡するために、河川内に木製トラップを設置し、10月まで約2週間毎に漁獲を試みた。漁業者から漁獲物の買い上げをし、漁獲情報も得た。 【結果と考察】調査期間中に漁獲されたウナギの総尾数は668尾であった。00年群は18尾再捕された。総漁獲量との割合は2.69%で、再捕率は0.23%であった。放流点より下流域で66.06%が再捕されている。01年群は放流点から下流域で2尾再捕された。この群はまだ体型が小さいので漁具選択のため再捕尾数が少ない。総漁獲尾数に対する割合は0.30%で、再捕率は0.025%であった。00年群では、成長の良い個体と悪い個体が見られた。肥満度は年々増加しており、肥満度の低い個体は脱落すると考えられた。01年群でも若干であるが成長が認められた。00年群の黄化体色の割合は72.22%に増加した。放流魚の自然順化が促進されていることがわかる。以上のことから、放流ウナギは生活条件が上流域に比べてより良いと思われる下流域で生活することにより、より早く自然順化する傾向にあること、順化したウナギの成長が天然ウナギと類似であることなどが推察された。なお、同種のウナギが多く分布する中国においてウナギ資源研究の情報交換を行い、ウナギ資源の保全策について話し合った。
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