研究概要 |
昨年度、ニジマスの耳石の主要な基質タンパク二種(OMP-1,Otolin-1)の免疫組織化学により、ニジマス内耳におけるOMP-1産生細胞は扁平上皮細胞と移行上皮細胞の一部、Otolin-1産生細胞は感覚上皮細胞に接する円筒形の背の高い細胞であることを明らかにした。さらに、OMP-1が耳石にのみに含まれるのに対し、Otolin-1は耳石と耳石膜ゼラチン層の両方に含まれることを明らかにした。本年度は、さらに詳細な電顕観察(TEM/SEM)を行い、耳石基質が厚いシート状の基質とその間の微細な網目状の基質の二種類からなること、網目状の基質の密度の濃淡により日周輪が形成されること、OMP-1,Otolin-1ともに微細な網目状基質内に分布すること、したがって両基質の産生・沈着量の日周変動により日周輪が形成される可能性があること、を明らかにした。 さらに、リアルタイムPCR法を用いて、ニジマスの個体ごとに両タンパク質のmRNA発現量を定量するための技術開発に取り掛かった。まず、内部標準遺伝子としてニジマスβ-actin cDNAの部分配列を決定した。決定したβ-actin cDNA部分配列、OMP-1およびOtolin-1 cDNAの全長を元にして、定量PCRに用いるプライマーを設計し、目的遺伝子が増幅されることを確認した。次に、各目的遺伝子を含むプラスミドDNAの希釈系列(10^1-10^8コピー)を作成し、これらを鋳型にしてRT-PCRを行って各遺伝子の増幅曲線を得、各mRNAのコピー数算出を可能とした。個体毎に発現量を定量するため、一個体から得られる二つの内耳小嚢からRNA抽出を行い、これを鋳型にしてPCR増幅を行い、目的部分のみが増幅することを確認した。このように、本年度の研究でニジマス個体ごとのOMP-1,Otolin-1発現量の定量法を確立することが出来た。
|