研究概要 |
魚の個体当り酸素消費量Mと体重Wの関係はM=aW^bのアロメトリー式で表される。b値は一般にb<1で、単位体重当り酸素消費量はM/W=aW^<b-1>に従い体重の増大に伴い低下する。この関係は、稚魚期に共食いをする魚では仔魚期から稚魚期への移行期に急激に変化する。急激な変化というのは、上記のアロメトリー関係において、仔魚期においても稚魚期においてもb値は変わらないまま、仔魚期から稚魚期への変態期にa値が急激に上昇することである。本研究は、稚魚期に共食いをする魚において変態期におけるこの活動度の上昇が共食いを助長する機能を果たしているのではないかという仮説を検証することを目的とする。本年度は,種苗生産において仔稚魚期に共食いを行い初期減耗が激しいトラフグについて,共食い現象が酸素消費量の個体発生的変化と密接に関係していることを報告する. 体重0.0006-3.0g(孵化後0-57日齢)の仔稚魚について酸素消費量を20℃で測定した.また噛み合い行動の観察と死亡個体の計数を行った. 艀化時における体重は約0.0006gで個体差は小さかったが,成長に伴い個体差は増大した.単位体重当り酸素消費量M/W(μl/g/min)と体重W(g)の関係はM/W=aW^<b-1>で表された.この関係は体重0.0014-0.0076gでM/W=4.33W^<-0.16>,0.0098-0.12gでM/W=5.72W<-0.16>,0.13-3.0gでM/W=7.23W^<-0.16>であった.すなわち,体重が0.01gと0.1gの発育段階のあたりで,M/W=aW^<b-1>におけるb-1の値が変化しないままa値が急上昇した.噛みつき行動が顕著に観察されたのはa値が急上昇する0.01g前後と0.1g前後で,成長が中程度の個体がこれらの体重を超えたあたりで日間死亡率はピークに達した.以上の結果は共食いを助長するメカニズムの存在を示唆する.
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