研究概要 |
有明海は、ノリや貝類を始めとする海産物が豊富にとれ、中でも養殖ノリは、毎年全国1,2位の生産高を誇り、佐賀県の基幹産業の一つとなっているが、養殖現場においては毎年養殖ノリの病害、赤腐れ病が発生し、時にはノリ養殖業の健全経営に支障をきたすこともあり問題となっている。 そこで、我々はノリ赤腐れ病を引き起こす真菌ピシウム菌に対する抗真菌性遺伝子を導入した耐病性ノリ種苗を確立することを目的に、高等植物では陸上植物以外に成功例のない耐病性組換え作物を、ノリを用いて試みたところ、まずノリ養殖域より分離した海洋細菌Pseudomonas sp. ND137株のノリ細胞壁分解酵素の大量生産およびプロトプラストの作出した結果、プロトプラスト作出組換え体酵素により、大量にかつ効率的にノリプロトプラストを獲得することができた。また、耐病性ノリ葉状体を食品として応用することを鑑み、その安全性確保のための基礎的研究として、Streptomyces sp. AP77、Bacillus sp. BE1およびFE1、Pseudomonas sp. PE1およびPE2株が生産する抗ピシウムタンパクの性状と作用機序について検討し、本タンパクのpH安定性、温度安定性、金属イオンの効果、基質特異性、N末端アミノ酸配列等を明らかにすることができた。さらに、作用機序の検討としてピシウム細胞壁構成成分に対する分解活性、ピシウム代謝阻害作用等を検討したところ、Streptomyces sp. AP77株が産生する抗ピシウムタンパクの作用機序は、サイトックスグリーン蛍光染色法により、抗ピシウムタンパクはピシウムの細胞膜の透過性を変調させることによりピシウムを溶解することが明らかになった。
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