研究概要 |
有明海は、ノリや貝類を始めとする海産物が豊富にとれ、中でも養殖ノリは、毎年全国1,2位の生産高を誇り、佐賀県の基幹産業の一つとなっているが、養殖現場においては毎年養殖ノリの病害、赤腐れ病が発生し、時にはノリ養殖業の健全経営に支障をきたすこともあり問題となっている。 そこで、我々はノリ赤腐れ病を引き起こす真菌ピシウム菌に対する抗真菌性遺伝子を導入した耐病性ノリ種苗を確立することを目的に、高等植物では陸上植物以外に成功例のない耐病性組換え作物を、ノリを用いて試みている。 まず、佐賀県有明海および筑後川より採取した水試料よりP. porphyrae細胞壁分解細菌13株を分離した。各採取地点で得た分離細菌の中から、最もP. porphyrae細胞壁分解活性の強かったBacillus sp. BE1,Bacillus sp.FE1、Pseudomonas sp.PE1およびPseudomonas sp. PE2の粗酵素についてP. porphyrae細胞壁に対する最終分解産物を検討したところ、BE1、FE1およびPE2株でN-アセチルグルコサミンとグルコースが、PE1株ではグルコースだけが検出された。さらに、これら海洋細菌4株すべての粗酵素にβ1,3;1,4-およびβ1,3-グルカン分解活性が確認され、PE1株以外にはキチン分解活性も観察された。そこで、Pseudomonas sp. PE2株が生産するピシウム細胞壁構成酵素の遺伝子のクローニングと解析を行ったところ、これらの酵素は、多様な多糖結合能を有する機能領域を有しており、試験した数種の多糖に対して特異的な結合活性を示した。特にキチナーゼAは糖質結合領域ファミリー6を有していることを初めて明らかにした。また、Pseudomonas sp. PE2のβ-1,3-グルカナーゼBはタンパク質-多糖間の相互作用に関連しているpolycystic kidney disease (PKD)領域を有しており、この領域を有した微生物由来のβ-1,3-グルカナーゼも初めて明らかにすることができた。
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