研究概要 |
有明海は、ノリや貝類を始めとする海産物が豊富にとれ、中でも養殖ノリは、毎年全国1,2位の生産高を誇り、佐賀県の基幹産業の一つとなっているが、養殖現場においては毎年養殖ノリの病害、赤腐れ病が発生し、時にはノリ養殖業の健全経営に支障をきたすこともあり問題となっている。 我々はノリ赤腐れ病を引き起こす真菌ピシウム菌に対する抗真菌性遺伝子を導入した耐病性ノリ種苗を確立することを目的に、高等植物では陸上植物以外に成功例のない耐病性組換え作物を、ノリを用いて試みている。 そこで本年度の研究では、抗ピシウムタンパク、SAPの抗P.porphyrae活性の作用機序として、P.porphyrae細胞壁構成成分分解活性およびP.porphyrae細胞膜透過性について検討したところ、P.porphyrae細胞壁構成多糖およびタンパクに対する分解活性は観察されなかった。しかしながら、MTTアッセイ法では、50μg/mlのSAPの処理によってP.porphyrae菌糸の抑制が観察され、作用1時間目から原形質の漏出に続き、菌糸の膨張および崩壊が観察された。なお、SAPはP.porphyrae細胞膜の透過性に影響を与え、その影響性は、濃度依存的に増加することが観察された。膜の脱分極剤、CCCPを添加した場合、SAPの膜透過性影響は減少した。一方、K^+を添加した場合、高濃度のSAPの膜透過性への影響は増加し、Mg^<++>添加ではわずかながらSAPの膜透過性への影響は減少した。また蛍光顕微鏡観察においても、経時的にSAPの膜透過性への影響が観察され、これらの結果より、SAPの抗P.porphyrae活性の作用機序は、P.porphyrae細胞膜の透過性に関与している可能性が示唆された。
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