熊本県五和町沖の調査海域に生息思するハンドウイルカ個体数が2000年に激減し、大半が他海域に移動した。同海域に残った個体は血縁関係の濃いpod(平均8〜9頭)と呼ばれる小さな集まりのいくつか(以下groupという)と考えられた。これらの個体は移動した個体に比べ、親しい関係の個体の集まりと考えられた。このgroup構成個体から得られたシグネチヤーホイッスルは28種であった。このgroup内だけの限られた音声交信によりシグネチャーホイッスルの役割について解明を行う予定であったが、翌年5月には他海域に移動していた個体が帰り再びほぼ元の頭数に復元した。そこで、このgroup内の個体との交信とgroup外の個体への交信関係を調査した。どちらの交信においても応答遅延時間にほとんど差が無く、約1秒であった。また、シグネチャーホィッスルはgroup内で頻繁に使用されることが期待されたが、むしろgroup外の個体との交信頻度の方が塙かい結果となった。このことはgroup内での録音が灘しく、多くのgroupが滞留する時間帯での録音が多かったことにも起因している。しかし、group内での互いの確認というよりも、group外の個体との遭遇の際により頻繁に交信を行うことにシグネチャーホイッスルが使用されている可能性が高いとも言える。 これまで、この海域のハンドウイルカのシグネチャーホイッスルの記録を7年間継続してきたが、2001年に確認されたシグネチャーホイッスル274種の内91種はこの間継続して記録されているものである。毎年いくつかのシグネチャーホイッスルの追加と消滅が観測されているが、これらについても継続して調査していく予定である。 また、各個体のシグネチャーホイッスルの変動及び他個体による物まねも同時に調査中である。
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