研究概要 |
我々はメラノトロピンとエンドルフィンが、ニジマスとコイにおいて白血球の活性を増強することを見いだした.本研究ではこれらホルモンのカレイ目マツカワ、Verasper moseri、における作用を明らかにすることを目的とした. (1)マツカワ脳下垂体から3種類(A, BおよびC)のPOMC cDNAをクローニングした.いずれのcDNもα-メラノトロピン、β-メラノトロピンおよびβ-エンドルフィンをコードする.但し、POMC Cに含まれるβ-エンドルフィンの最小活性単位には変異が存在した.これら3種類のPOMC mRNAは、全て脳下垂体(単一個体)の前葉と中葉で発現することを、免疫組織染色、in situハイブリダイゼーションおよび逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)により認めた.また、逆相高速液体クロマトグラフィー分画物を質量分析し、各POMC由来のペプチドのほとんどを同定した. (2)以上の如く同定したマツカワPOMC関連ペプチドのうち、POMC AおよびBに由来するα-メラノトロピンを化学合成し、マツカワ・マクロファージの活性酸素産生能に対する効果を調べた.その結果、α-メラノトロピン(1pM〜10nM)の添加によりマクロファージの活性が抑制された.しかし、ホルモン処理後に刺激物のホルボールミリスタートアセタートあるいはリポポリサッカライドを添加すると、マクロファージの活性に増進あるいは抑制が認められる場合、および変化が認められないときがあった.これら刺激物の添加は、α-メラノトロピンの効果に不定の変化を生じさせるものと考えられる. (3)逆転写競合PCR法により、全脳下垂体における3種類のPOMC mRNAの定量法を可能にした.脳下垂体を前葉と中葉に切り分けると、前者には本法を適用できないが、後者においては定量が可能であることが分かった.
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