研究概要 |
本研究は,駿河湾奥部海域に出現するソコダラ科の卵,仔魚の形態発育を調べ,本科の初期生活史を明らかにすることを最終目的として,行われた. この3年間の研究によって,以下の事項を明らかにすることができた. 1.採集されたソコダラ科卵のふ化実験を行い,ヘリダラCoryphaenoides marginatusとムグラヒゲ?Caelorinchus kishinouyei?の卵内発生およびふ化仔魚を明らかにした.ムグラヒゲ?については,「?」が付加されているが,計数形質が重複する種のDNAデータベースの解明が不十分であったので,種名を決定できなかった. 2.ネット採集されたソコダラ科仔魚は189個体に達した.これらの形態を詳細に調べた結果,体形,黒色素胞配列,および計数形質などによって,6タイプへ識別され,さらにヘリダラ,ムグラヒゲ?,トウジン?Caelorinchus japonicus,サガミソコダラVentrifossa garmani,および属名不明の2タイプへ同定された.それらの形態発育を記載し,識別形質を明らかにした.さらに,前2種が属する属の特徴をまとめた.ミサキソコダラ属Ventrifossaの仔魚が初めて報告された. 3.ソコダラ科ではないが,チゴダラ科のカラスダラHarargyreus johnsoniiの稚魚が採集されたので,記載し,Ichthyological Researchに投稿した. 4.最終年度より,海底谷近底層での採集方法の検討を始め,現在では水深200-600mの底上10mから50m層の曳網を行い,本科仔魚の採集調査を実施している. 以上の成果によって,極めて知見の少なかったソコダラ科幼期を断片的ではあるが明らかにすることができた.しかしながら,未だ採集個体数が少ないため,現在も採集方法を検討しながら,引き続き調査を実施している.
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