研究概要 |
営巣前の,卵黄蓄積が一旦停止したシロウオの卵巣を用い、in vitroで生殖腺刺激ホルモンを添加し培養液中に産生されたestradiol-17β(E_2)の濃度を測定した.シロウオ卵巣の単位乾燥重量当たりのE_2産生量は,卵黄蓄積後期のギンザケの57倍に達した.また、シロウオ卵巣型P450アロマターゼと思われるcDNAの全塩基配列を決定したところ,517残基のアミノ酸をコードした全長1996塩基からなり、現在明らかとなっているいくつかの動物種の卵巣型P450アロマターゼの塩基配列と高い相同性を示した.シロウオの脳型P450アロマターゼは現在、解析中である.ノーザンブロット法により卵巣の発達段階の違いによるP450アロマターゼmRNAの蓄積動態を調べた結果、営巣前個体群ではその蓄積量は少なく、営巣5日個体群においてその蓄積量が急激に上昇することがわかった.これらのことから、雌シロウオの卵黄蓄積およびE_2産生能がP450アロマターゼにより制御されていること、さらに,巣穴に入ることで急激に卵巣のP450アロマターゼmRNA蓄積量が増加することから、産卵のための環境がアロマターゼ活性に影響していることが示唆された.来年度は、免疫組織化学染色法やin situ hybridization法によりP450アロマターゼの卵巣組織での発現部位を特定し、さらに,シロウオP450アロマターゼの培養細胞による発現系を立ち上げ,その特性を阻害剤を用いた培養実験から明らかにしてゆく予定である
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