研究概要 |
平成14年度は,人工艀化し,飼育したマサバで,艀化後10日目までの仔魚期における核酸比(RNA/DNA比)とタンパク質含量の推移を,26℃,29℃の飼育水温別に,また個体別に明らかにした。その結果,26℃と29℃の飼育水温では,マサバの初期成長はともに23℃より優れていることが明らかとなった。また仔魚1個体あたりのRNAおよびDNA含量は,孵化後4日目まではどの飼育温度も変わらなかったが,6日目以降26℃で最も多くなった。核酸比(RNA/DNA比)およびタンパク質含量は,26℃で他の温度よりも常に高い値で推移した。この結果,マサバの26℃での良好な成長は,生化学的指標においても確かめられた。 人工艀化し,飼育したクロマグロ仔魚の皮膚粘液細胞と鰾の発育過程を明らかにした。その結果,クロマグロ仔魚は,艀化直後から皮膚に粘液細胞を多数有し,成長にともなって粘液細胞の種類とそれらの組成が異なってゆくことを明らかとした。これにより,クロマグロ仔魚飼育において頻度が高く発生し,仔魚飼育における問題点となっている浮上斃死は,既に報告されているハタ類仔魚と同様に,クロマグロ仔魚が多数の皮膚粘液細胞を有することが一つの要因となっていることが明らかとなった。 クロマグロの鰾は孵化後4日目から開腔が始まる。クロマグロでは鰾の開腔の成功は,飼育環境,特に照度と深い関わりがあることが明らかとなった。すなわち適切な照度範囲を保つこと,照度に日周リズムを与えることが必要であることが明らかとなった。 平成14年6月,近畿大学水産研究所では、本研究の成果を応用し,クロマグロの完全養殖(生活史1サイクルの飼育下での実現)が達成された。
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