研究概要 |
ホタテ貝を嫌気ストレスに曝すと、急激な解糖が生じ、グリコーゲンの分解に伴いオクトピンが蓄積された。この際、ホスホフルクトキナーゼ(PFK)の活性化とAMPの蓄積が認められた。一方、アサリを嫌気及び塩ストレスに曝すと、ホタテ貝の場合と同様、急激な解糖に伴いAMPの蓄積が認められた。また、各種貝類の各組織からPFKの粗酵素液を調製し、核酸関連物質に対する基質特異性について検討した結果、貝の種類、臓器の異なりにより違いはあるものの、全ての貝類のPFKはADPをリン酸供与体として利用できることが示唆された。ホタテ貝平滑筋からPFK粗酵素液を調製し、PFKを蛋白的に均一になるまで精製を行い、核酸関連物質の影響について検討したところ、PFKはリン酸供与体としてATPのみならずADPをも利月することが明らかとなった。さらに、物理・酵素化学的性質について検討した結果、高等動物のPFK同様、糖代謝中間体であるFru2,6-P2によって強力に活性化され、この活性化は、基質に対する親和性の増加、最大反応速度の増加をもたらすものであった。ゲルろ過及びSDS-PAGEにより、ホタテ貝PFKは分子量98,000のタンパク質より構成される4量体であることが示唆された。クローニングを目的に、ホタテ貝PFKのN末端配列を明らかにするとともに、プロテアーゼによるPFK加水分解物由来ペプチドのアミノ酸配列を決定した。次いで、ホタテガイ閉殻筋よりmRNAを抽出した後、逆転写酵素によりcDNAを作成した。このcDNAをテンプレートとし得られたホタテガイ閉殻筋PFKペプチド断片やN末端アミノ酸配列から作成したプライマーを用いてPCRを行い、増幅されたDNA断片のクローニングを試みた。ホタテガイPFK遺伝子の部分塩基配列及び全塩基配列の決定が今後の課題として残された。
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