研究概要 |
1.今までに外部形態から分けられた、日本海産長腕型・雌、短腕型・雄、小笠原産丸鰭型、およびニュージーランド産ダイオウイカのmtDNAのCOI中の568dp塩基配列に種レベルでの違いが認められないことが明らかにされた。このことは、これらダイオウイカが同種である可能性の高いことを示唆しているが、外部形態の差異から考えると全てを同一種と断定するには至っていない。 2.COIをより長く読みとる試みと、NDIIの解析を試みているが、プライマーなどの問題で、いまだ結果は得られていない。COIの568dpに蘭しては,今までに解析した日本近海産頭足類約30種に加え、新たに25種の塩基配列が明らかにされた。 3.2002年8月に東海大学海洋科学博物館で開催された「イカのびっくり博覧会」において、今までの研究成果をまとめ「巨大イカ・ダイオウイカの話」として一般来館者約130名を対象に講演を行った。 4.2002年10月に小笠原父島を訪れ、10日間にわたり小笠原近海のダイオウイカ調査を行った。小型漁船を傭船し、ソデイカ樽流し縦縄漁具を用いて、深海デジタルカメラを水深400、600、800、1000mに吊り下げ、ダイオウイカの生時映像を記録する試みであったが、アカイカ、ヒレジロマンザイウオ、ヨシキリザメの映像は得られたものの、ダイオウイカは残念ながら撮影されなかった。 5.その際、小笠原水産センターを訪れ、当所に冷凍保存されていたダイオウイカ2個体を研究用に国立科学博物館に移管していただいた。両個体とも保存状態がよく、調べたところどちらも成熟雄で第4腕が外套長の1.6倍と非常に長く、確信をもってArchiteuthis japonica Peffer,1912と同定することが出来た。 6.これら、小笠原産A.japonica・雄と日本海産短腕・雄は形態的に明らかに異なり、日本海産短腕・雄は未記載種の可能性が高いことが強く示唆された。ただし、どちらの雄が日本海産長腕型・雌と交接するのかといった重要な点は、未だ分かっていない。 7.2003年2月15日〜21日にタイ王国・プーケットで開催されたCIAC2003国際頭足類ワークショップ・シンポジウムに参加し、今までの研究成果をまとめArchiteuthis in Japanese Water"の演題で研究報告を行った。
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