1.本研究期間中に、日本海側の兵庫県、京都府の海岸に打ち上げられたダイオウイカ2個体及び小笠原近海で釣獲されたダイオウイカ2個体の標本を入手した。これ以前に入手し国立科学博物館に保管されている2個体及び沖縄近海で釣獲され美ら海水族館に保管されている1個体をあわせ、分類学的検討を加えた。その結果、雄の個体では外部形態の異なる2型、腕が短く交接腕をもつ短腕型と腕が長く交接腕をもたない長腕型が確認された。雌個体では、外部形態による明らかな違いは認められなかった。 2.一方分子系統分類の手法から、これら雄の短腕型、長腕型、雌およびニュージーランド近海産ダイオウイカのmtDNAを調べた。特にCOIに注目し、当初は658bp塩基配列しか解析できなかったが、本年度に新たにプライマーを開発し1200bpで比較を行ったが、これら4検体の間に種レベルでの違いは認められなかった。したがって遺伝子からはニュージーランド産も含め、これら全てが同一種である可能性の高いことが示唆されたが、外部形態から明らかに認められる雄の2型が同種であるのか別種であるのかどうか、さらに検討の必要があるものと考えている。 3.日本近海産頭足類約60種に関して、COI(658bp)の塩基配列を明らかにし、分子系統分類学的に比較検討したところダイオウイカはウチワイカと最も近縁であることが示された。 4.分類学的研究と平行して、ダイオウイカの生きている姿を記録する試みとして平成14、15年に小笠原近海で小型深海デジタルカメラを用いた調査を行った。ダイオウイカの姿をとらえることは出来なかったが、アカイカをはじめとする中・深層性大型遊泳動物の画像および行動生態に関する興味深い知見が得られた。 5.これら分類学的研究および生態に関する研究をまとめ、平成13年に日本動物分類学会第37回大会、平成14年に東海大学海洋科学博物館特別展、平成15年にCIAC2003国際頭足類ワークショップ・シンポジウムにおいて、日本近海産ダイオウイカに関する研究発表、講演を行った。また、平成15年のイカ類資源研究会議において「小笠原近海でDSLを用いたアカイカの行動モニタリング」について報告した。
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