1 本研究期間中に、日本海側及び小笠原近海から得られた5個体の標本と国立科学博物館に保管されている4個体及び沖縄の美ら海水族館に係管されている1個体をあわせ、分類学的検討を加えた。その結果、雄の個体では外部形態の異なる3型、腕が外套膜より短く両第4腕が交接腕となる短腕型と腕が外套膜の1.2倍で両第4腕が交接腕となる中腕型、腕が長く交接腕をもたない長腕型が確留された。雌個体では、外部形態による明らかな違いは認められなかった。 2 一方分子系統分類の手法から、これら雄の短腕型、中腕型、長腕型、雌およびニュージーランド近海産ダイオウイカのmtDNAのCOI1276bpで比較を行ったが、これら4検体の間に種レベルでの違いは認められなかった。したがって遺伝子からは、これら全てが同一種である可能性の高いことが示唆された。 3 日本近海産頭足類約60種に関して、COI(658bp)の塩基配列を明らかにし、分子系統分類学的に比較検討したところダイオウイカはウチワイカと最も近縁であることが示された。 4 分類学的研究と平行して、ダイオウイカの生きている姿を記録する試みとして平成14、15年に小笠原近海で小型深海デジタルカメラを用いた調査を行った。ダイオウイカの姿をとらえることは出来なかったが、アカイカをはじめとする中・深層性大型遊泳動物の画像および行動生態に関する興味深い知見が得られた。 5 従来の日本近海産ダイオウイカの分類研究から、短腕型はMuitsukuri & Ikeda (1895)が報告したArchiteuthis jpaonicaであることが確証された。しかし、その他の2型、さらに世界のダイオウイカに関しては状態の良い多くの標本を元にした外部形態および分子分類学的研究が、必要とされた。
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