研究概要 |
本研究の目的は,水産分野におけるHACCP(Hazard Analysis Critical ControI Point)を念頭において,免疫反応のブラウン運動を指標とした高感度かつ迅速な新しい微生物検出法を開発することである.昨年度は,検出操作のための試料の前処理法を検討した.本年度はこれに引き続き,1)各種魚介類における菌体脱離法の確立およびフローサイトメトリー(FCM)による菌数測定,2)ブラウン運動を指標とした硝化細菌の特異的検出を試みた. まず,マアジ,スルメイカ,アサリ,マダコなどの魚介類試料に付着している微生物を脱落させるため,超音波振動エネルギーによる菌体脱離を試みた.その結果,約9分の超音波処理でほとんどの菌体を脱離できることがわかった.またこの方法を用いて,魚肉貯蔵下における微生物菌数をFCMで測定したところ,10^5-10^9cells/gの範囲での測定が可能であった 次に,ラテックス粒子に固定化された抗-硝化細菌抗体を用いて,硝化細菌をモデルとしてその特異的検出を試みた.すなわち,硝化細菌と抗体ビーズを反応させ,この際生じるブラウン運動の変化をサブ.ミクロン粒度分布計で測定し,それらの粒度分布を解析した.その結果,予想される菌体の全長よりも大きな値が得られた.これは抗原抗体反応により複数の菌体が抗体とともに凝集し,その結果粒子の全長が大きくなったためと考えられた.一方,大腸菌を対照試料とした場合,上記のような変化は認められなかった.したがって本法を用いることにより硝化細菌を特異的に検出できることが示唆された.なお,一検体当たりのブラウン運動解析所要時間は約6分であり.抗原抗体反応等の前処理を加えても2時間程度で菌体検出を行うことが可能であった.次年度では,サルモネラ属菌の検出に本法を応用し,その迅速検出法の確立を検討する予定である.
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