研究概要 |
平成13年度は,シァノバクテリンをモデルとした新しい除草剤や赤潮防除物質を開発するための基礎研究として、まずは,誘導体の合成にも適応可能であり,効率的かつ立体選択的なシアノバクテリンの光学活性体の新規合成ルートの開発を行った。 Feringa等の方法によりフルフラールの光酸素酸化物と1-メントールとの縮合により調製したキラルなシントン、(4R)-4-(1-menthyloxy)-4-butenolideの3位へのイソプロピルアニオンの共役付加、それに続く2位の3-chloro-4,5-methylenedioxyphenymethyl bromideとのアルキル化により、ラクトン2位と3位に立体選択的に置換基を導入した。次いでこのもののアルカリ加水分解物の4位にp-methoxybenzyl phenyl selenideから発生させたアニオンを付加させた後、再ラクトン化、セレノキシドの熱脱離反応を行い4位にp-メトキシベンジリデン基を導入することにより,シアノバクテリンの3-デヒドロキシ体を得た。最後にアリル位(3位)を二酸化セレンを用い水酸化することにより、(2R,3R)-シアノバクテリンの合成を完結した。しかしながら,この酸化反応は立体選択性に乏しく,目的物(2R,3R)-体とその3位のエピマーである(2R,3S)-体との生成比は15:85であった。また,合成した(2R,3R)-シアノバクテリンの比旋光度は[α]_D+67.2^Oであり,天然物([α]_D+102^O)のものに比べ低かった。 全6段階と比較的短工程でキラルシントンの調製が容易な,実用的なシアノバクテリンの光学活性体の新規合成法の開発に成功した。しかしながら,最終工程である3位の水酸化の立体選択性の改善および光学純度の低下の原因の解明が主な課題として残されている。
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