研究概要 |
前年度にシアノバクテリンの光学活性体の新規合成法の開発に成功したが、3位の水酸化の際の立体選択性の欠如など、いくつかの問題が残されていたので、平成14年度はまずは、合成の改良法の検討から始めた。従来までの合成法の欠点は、目的のシアノバクテリンに対して、その3位のエピマーが優先的に生成する点にあるが、これは、キラルなラクトン(4R-4-(l-metnthyloxy)-4-butenolide(1)へのタンデム型の共役付加とアルキル化を行ったため2位と3位の置換基がトランスに導入されたことに起因する。そこで、トランス体の生成比を抑えるため、ラクトン1へのイソプロピルアニオンの共役付加物を加メタノール分解し生じる鎖状のエステルmethyl 3-formyl-3-isopropylpropanoateと3-chloro-4,5-methylenedioxyphenylmethyl bromideとのアルキル化を検討した。この結果、シアノバクテリンとそのエピ体それぞれの前駆体の生成比30:70まで上げることができた。次いで合成したシアノバクテリンと関連化合物の生理活性試験を行った。イネを用いた陸上植物に対する除草活性試験においては、合成した化合物いずれにも明白な活性は認められなかった。一方、海洋植物(海藻)に対する生理活性試験においては、エピシアノバクテリンは、Heterocapsa circularisquamaやChattonella marinaのような渦鞭毛藻に対してDCMUをしのぐ殺藻活性を示すのに対し、ヒラアオノリに対しては、殺藻活性、成長阻害活性ともにほとんど示さず、藻類の種間に高い選択性を示した。また、シアノバクテリンにも同様の傾向がみられた。これらのことより、シアノバクテリン及びエピシアノバクテリンは、高選択的な赤潮防除物質のリード化合物として期待でき留ことが判明した。今後さらに構造改変を行うことにより、より高活性・高選択性な物質が見いだされる可能性が十分にあり、新しいタイプの赤潮防除技術への展開が期待できる。
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