研究課題/領域番号 |
13660203
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
原 研治 長崎大学, 水産学部, 教授 (10039737)
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研究分担者 |
長富 潔 長崎大学, 水産学部, 助教授 (40253702)
石原 忠 長崎大学, 水産学部, 教授 (40039722)
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キーワード | 筋原繊維結合型セリンプロテアーゼ / N末端アミノ酸配列 / 遺伝子クローニング / 一次構造 / トリプシン型酵素 |
研究概要 |
魚肉中の筋原線維に結合しているセリンプロテアーゼ(MBSP)は、魚肉の利用加工はもとより、筋肉タンパク質の代謝にも密接に関連する興味深い酵素であるにもかかわらず、精製が非常に困難であることから研究は遅れている。 昨年度、コイより精製したMBSPを用い、そのN末端アミノ酸配列を決定した。このデータからセンスプライマーを、セリンプロテアーゼに良く保存されている活性中心のアミノ酸配列を基にアンチセンスプライマーを設計した。全RNAはコイ筋肉からISOGEN(日本ジーン社製)を用いて抽出した。ついで、これからmRNAを精製し、.逆転写酵素でcDNAライブラリーを作成した。これを鋳型として、RT-PCR法、5'および3'RACE法を用いてコイMBSP遺伝子クローニングを行い、全一次構造を明らかにした。 その結果、本酵素の遺伝子は242個のアミノ酸をコードする726bpのcDNAからなることが明らかとなった。また、21残基目からのアミノ酸配列が精製酵素より決定したN末端アミノ酸配列(40残基)と全て一致したことより、222アミノ酸の活性型MBSPの上流に疎水性領域を有する20残基のプロ型ペプチドが存在することが明らかとなった。このことよりプロ型から活性型への変換はGlu(20)-lle(21)のペプチドが水解されて起こることが明らかとなったが、この変換酵素についてはこれからの課題である。 他のトリプシン型プロテアーゼと比較すると活性型MBSPは全体としてのホモロジーは低かったが活性中心の存在するC末端領域は良く保存されていた。また、活性型コイMBSPは分子内にLysを27残基も含んでいることが明らかとなった。この事実から、MBSPと筋原線維とはイオン結合している可能性も示唆された。こめ考えは、本酵素が筋原線維から0.5MKCl, pH4.0の条件で解離することからも支持される。 次年度は水産食品でよく用いられている海産魚のエソを用いて、遺伝子クローニングにより全一次構造の解明を行う。さらに分子生物学的手法(DNAプローブ及びモノクローナル抗体)により、魚類の生体内における本酵素の発現及び筋細胞における局在をタンパク質と遺伝子レベルで追求する予定である。
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