コラーゲンは穏やかな条件で加熱するとゼラチン化して、3本のポリペプチド(α鎖)に解離するが、加熱の程度を強めるに従いペプチド結合の切断が起こり徐々に低分子化することが知られている。加熱によるゼラチンペプチドの生成機構や食品における機能は現在ほとんど解明されていない。本研究ではニジマス、ハマチ、ヒラメの皮膚から抽出した酸可溶性コラーゲンを用い、これらコラーゲンの熱分解に対する加熱温度、加熱時間および塩濃度の影響ならびに内因性プロテアーゼの関与について検討した。 各魚種の皮膚より調製した酸可溶性コラーゲンについて、5mM酢酸、1M NaClを含む50mMリン酸ナトリウム緩衝液、50mMリン酸ナトリウム緩衝液および蒸留水に透析して、それぞれ酸性溶液(pH3.5)、中性塩溶液(pH7.5)、中性懸濁液(pH7.5)および蒸留水懸濁液(PH6.0)とした。これらについて40〜100℃の範囲で30分間加熱したところ、いずれの条件でも80℃付近より分解産物の出現がSDS PAGE上で認められた。80℃と顕著な分解が見られた100℃に焦点を絞り、時間変化において熱分解ペプチドの生成パターンを調べたところ、いずれの条件でも時間経過に伴い、分解は徐々に進行した。酸性溶液では再現性のよい限定的分解が見られ、中性塩溶液および中性懸濁液では非限定的な分解によると考えられる連続的なSDS-PAGEパターンを示した。また、中性懸濁液は中性塩溶液に比べて、分解が早く進行した。次いで熱分解に対する塩濃度の影響を調べた結果、塩添加により分解が抑制されることが分かった。蒸留水懸濁液においては他の3条件ほど顕著な分解は見られなかった。温度間での分解パターンに大差はないが、温度が高いほど分解は早く進行した。なお、プロテアーゼインヒビターカクテルを添加して同様の実験を行なったところ、SDS-PAGEパターンにはほとんど変化が認められなかったためプロテアーゼが分解に関与している可能性は低いことが示唆された。
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