1.エンド型キチン分解酵素(キチナーゼ)アイソザイムの抽出・分離・精製:スルメイカ肝臓より素酵素を抽出し、硫安分画、キチンアフィニティーカラム、他各種カラムクロマトグラフィーを用いてキチナーゼアイソザイムを抽出・分離・精製した。精製酵素の分子量は42kDa、等電点は9.2であった。グリコールキチンに対する最適pHは3.5と7.0に、最適温度は60℃に、安定なpHは4〜5付近であり、Zn^<2+>、Ni^<2+>およびBa^<2+>により賦活された。本酵素は先に報告した38kDaキチナーゼのアイソザイムと示唆された。 2.キチナーゼの基質分解能および分解生成物の測定・分析:精製酵素のコロイダルキチンに対する最適pHは38kDaキチナーゼではpH3.0に、42kDaキチナーゼではpH3.0と9.0に認められた。グリコールキチンに対するK_mとk_catは38kDaキチナーゼでは0.071mg/mLと1.22/s、42kDaキチナーゼでは0.074mg/mLと0.196/sであった。両キチナーゼともグリコールキチン、コロイダルキチン、α-キチン(エビ殻、カニ殻)、β-キチン、およびキトサン(D.A.:95%)を分解した。特に38kDaキチナーゼはグリコールキチン、β-キチンを、42kDaキチナーゼはコロイダルキチンを良く分解した。両酵素ともN-アセチルキトオリゴ糖(2-6糖)に対し、4-6糖を分解し、4糖を2分子の2糖に、5糖を2糖と3糖に、6糖を2分子の3糖および2糖と4糖に分解した。さらにpNp-N-アセチルキトオリゴ糖(1-4糖)に対し、2-4糖よりpNpを遊離した。これらの結果より、両キチナーゼアイソザイムは各種の高分子キチン質を分解する能力を有し、かつ分解生成物の主成分は2糖および3糖である事が明かとなった。 3.キチナーゼのN-末端アミノ酸配列の決定:両酵素のN末端アミノ酸配列は38kDaキチナーゼではYLLSXYFTNWSQYRPGAGKYFPQNIまた、42kDaキチナーゼではEYRKVXYYTNWSQYREVPAKFFPENで、両酵素のN末端アミノ酸配列は異なったが、他種との相同性は認められた。
|