本年度は、中国を対象に計量経済学的予測手法を使って米、小麦、トウモロコシ、大豆の将来の需給予測を行うとともに、特に中国の食糧生産基地である黒龍江省を対象に改革開放政策への移行以来の農業的土地利用変化の要因分析と農業的資源環境の持続的な管理のあり方についての分析を行った。中国の食料需給予測においては、今後米については輸出余力が増加する可能性があり、小麦については良質小麦の輸入が増加する可能性があり、トウモロコシと大豆については構造的に輸入依存が高まる可能性があることが予測された。 黒龍江省の農業的土地利用に関しては、改革開放政策への移行以来、農業的土地利用のパターンが1980年代半ばと90年代半ばを境に3つの時期に区分され、黒龍江省の場合、80年代半ばの寒冷地稲作技術の導入と90年代半ばからのその急速な拡大、80年代半ばの家族請負制の導入、90年代半ばの請負期間の30年間への延長の影響が大きかったことが確認された。90年代半ばから急速に拡大した米生産については、稲作農家の市況反応性は高いものの、各地区の気象、土地、水の農業的資源環境条件から見て黒龍江省の水稲作付は2000年にほぼピークに達しており、特に持続的な米生産のための水資源の制約が高まっていることが確認された。
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