本研究の目的は、アジアの主要国を対象に食料需給モデルによって国内の食料生産を予測し、この食料生産をなるだけ環境に負荷をかけることなく持続的に実現させる土地、水、植生、社会資本等の農業的資源の適切な管理運営のあり方を明らかにすることである。この研究によって、中国、ミャンマー、インドネシアの食料需給モデルが開発され、将来の食料生産が予測され、それを資源環境的及び経済的に持続性を持って実現させる土地利用のあり方や農業政策のあり方が分析された。 本研究を通じて、中国については米・小麦等の食用穀物の増産圧力は弱まっており、水や土地、気象資源に適合的な立地形成の傾向が強まっていること、大豆や飼料穀物の生産については海外からの輸入農産物との競合関係と農業政策の影響が強まる中で立地変化が起こる可能性が高いことを明らかにした。ミャンマーについては、将来米不足が予測され、国内の米生産を拡大させるためには、現在政府が進めている灌漑投資による水資源確保だけでなく化学肥料等の生産資材補助、農村労働力の組織化、普及制度拡充の効果が高いことを明らかにした。インドネシアについては、米輸入への依存は今後も続くことが予測され、食料安全保障の観点から外島での農地開発が重要になることを明らかにした。アジア諸国の農業的資源環境管理のあり方は地域的特性が高く、全域一律の管理システムの普及は難しいこと、特にこれまで粗放的な農業経営が営まれてきた地域で資源環境管理の効果が高いことが確認された。
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