研究概要 |
本課題は、もぎ取りなど観光果樹園の展開している群馬県沼田市の果樹農家を対象にしたアンケート調査を実施して、インフラストラクチャーとしての道路整備が観光果樹園の展開にどのような影響を及ぼすのか、両者の関係をその調査結果を分析することによって実証的に明らかにして、道路などの農村インフラストラクチャー整備が、農業経営の新しい可能性に貢献する意義を考察する。この点からの分析評価は,これまでほとんど皆無といってもよい。そこで,本年度は,まず,道路整備と農業経営多角化の関係をとらえる概念的フレームワークを考察した。そして,もぎ取りなど観光果樹園の展開している群馬県沼田市の果樹農家を対象にしたアンケート調査結果から,道路整備が観光果樹園の展開に及ぼす影響を実証的に明らかにした。結果の要点については、以下のとおり。 まず、道路の整備の効果について,農業経営の多角化の観点から評価する概念フレームワークを構築した。その概念的考察から農産物のみの場合に比べて,観光農業の場合は,その効果が農業生産に加えて来訪者へも及ぶため需要・供給両曲線でシフトが生じることを明らかにした。 次いで,沼田市の観光果樹農園を対象にしたアンケート調査データから,従来の農業生産に比べて,需要面でのシフト効果から観光農業にとって道路整備の効果は,より大きいという結果を得た。しかし,その効果は,地域的に限定されたものであることや,道路整備のもたらす外部不経済について考慮すべきであることも示された。総じて,道路整備が農業経営多角化にもたらす効果の重要性が明らかにされた。
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