本年度は、基本的な資料収集の年と位置づけ、イギリスおよび日本国内での資料収集をおこなった。平成13年10月初旬にイギリスを訪問し、主としてレディング大学農業史研究センターで、国立公園協議会(Council for National Parks)の年報(1950〜1970年)を収集した。また、ランブラーズ協会のロンドンオフィスを訪問し、田園アクセス権に関する最新の情報と調査資料を収集した。日本国内では、田園アクセス権と共通の性格を有する入浜権に関する資料を、入浜権運動が展開された兵庫県を対象に行った。兵庫県立図書館で関連資料を収集するとともに、入浜権運動を担った組織の責任者を訪問し、機関誌や報告書など一次資料を収集した。 本格的な分析は2年次以降の課題であるが、さしあたりの知見は以下の如くである。 (1)イギリスにおける田園アクセス権は、1949年公布の「国立公園及び田園アクセス法」によって公的に確立した。しかしアクセス権の設定にかかわる要件については必ずしも明確でなく、地主との協議によるケースも多かったので、実際の運用に際しては、国立公園問題を協議するCNPの役割が大きかった。収集した年報の分析を通して、現実の運用過程での問題を詳細に検討するのが次年度の課題である。 (2)日本では入浜権訴訟がイギリスにおけるアクセス権運動と同種の性格を持つ運動であった。しかし、入浜権が明確な公的権利として確立するには至っていない。環境権と同様、公共信託理論による法的基礎づけが有力であるが、こうした権利が社会的にどう認知されて行くかを明らかにするには、わが国における土地あるいは自然物の所有観念の特質があわせて検討されなければならない。
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