研究の初年度は、農業生産情報のコンテンツとその表示方法の検討のために、環境保全型農業及び情報公開システムの現状について調査を行った。環境保全的な農業の実践事例は全国に存在するが、環境保全型農業自体の定義は明確ではない。三重県には情報発信に意欲的な農業主体が300程度確認されるが、環境保全型農業としての情報公開に応じたのは99対象であった。さらにそのうちで、すべての生産情報の開示に応じたのは有機栽培を行っている30対象のみであった。定義の不明確な環境保全型農業を標榜する農業主体は少なく、現状での生産情報公開に耐えうるのは有機農業実践主体であることが確認された。 有機農業における農薬・化学肥料無使用という情報公開には、原理的には使用可能な全資材を示し、それぞれについて無使用という表示方法が必要となるが、農薬、化学肥料を使用した場合、使用した資材のみを示せばすべての情報公開が可能である。BSE問題の発生以降、「生産物と公開された表示情報との乖離」が明らかとなり、その克服のためには「オフラインのサブシステム構築の重要性」が認識されつつある。環境保全型農業の情報公開には、使用したものの明示だけでなく、使用していないという情報の保証として追跡可能性の確保の必要が重要な問題となった。 これについては、当初「B to C」の成果を目指して構築された「三重ECODES」のようなインターネットを利用したオンライン上の情報公開システムが、井村屋を中心とする伊賀上野地域における環境六次産業的連携としてオフラインでの「B to B」の成果に発展しており、情報公開システムを同種の地域連携型ビジネスモデルとして定着させることがシステムからの情報を陳腐化させないための重要なサブシステムであることを定性的実証事例として確認された。 本研究には、この視点での事例収集がさらに必要であり、次年度への継続課題となる。
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