研究期間の最終年度に当たる本年は、本研究の代表者が参加し、三重県において検討されてきた地域環境保全産品認証システムの運用開始に伴い、本研究の対象となる情報公開システムと、そのコンテンツとしての環境保全型農業生産情報の流通とその機能や負荷を検証することができた。 この「人と自然にやさしいみえの農産物表示制度」は、トレーサビリティ機能を備えるものではないが、環境保全性を評価するための審査機能を備え、実際の生産物と公開された情報との一致を保証するための仕組みを有する。しかしながら、一方で、この表示システムの成果としての審査済み登録件数は、初年度の1年間で47件、105農家にとどまり、このシステムの有用な機能である審査ための生産履歴管理や現地調査への対応などのシステム負荷が高いというデメリットも確認された。 一般に、情報公開システムは、ネットワーク化され参加者が増加することによって、コスト負担は逓減に向かうが、この情報公開のためのコストはかなりの程度行政が担うものの、生産者にも上記の履歴管理等の追加労働が発生する。その反面、市場での価格評価がそれに見合うものとなる保証はまだ得られていない状況にある。しかし、コンテンツの充実に伴い、生産者と流通業者とのオフラインでの人的結合が増加しつつあることが確認された。 また一方で、こうした情報公開の進展によって、産品に表示される情報の準拠基準が収束し、消費者の情報誤認を克服する可能性も認められるが、これは登録生産者の産品の市場流通の進展によって確認されるものであり、本研究の次の課題とならざるを得ない。 以上のように、今年度の研究においては、実際の運用に供された情報公開システムという事例を得られたことによって、そのシステムが、生産物と情報との一致を目指すフレームを有し、そのコンテンツは、オフラインでのシステム構築を導くことが確認された。
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