研究概要 |
本研究の目的は次の3点である. 1.国内価格を高く維持し,輸出価格を引き下げ,国内販売と輸出販売をプールして支払う輸出国家貿易の価格差別により生み出されている「隠れた」輸出補助金に着目し,この価格差別による市場歪曲度の計測と「隠れた」輸出補助金を輸出補助金相当額(Export Subsidy Equivalent)のような指標を開発して数量化する. 2.輸出国家貿易という輸出独占組織により小麦や乳製品の国際市場の参加者が少数になることで,国際市場が不完全競争下におかれていることを実証的に明らかにし,輸出国家貿易が解体されることにより国際市場の歪曲性がどれだけ緩和されるかをシミュレーションすることによって輸出国家貿易に起因する国際市場の歪曲度を計量する. 3.上記の2つの数量化が実践的なものになるためには,CWB, CDC, AWB, ADC, NZ酪農ボード等の実態を詳細に把握し,現実によくマッチしたモデルが開発されねばならないので,それを可能にする十分な実態調査を行い,各輸出国家貿易の仕組みと問題点を整理する. そして,本年度における研究の概要をまとめると,以下のとおりである. 1.カナダ小麦ボード(CWB),カナダ酪農委員会(CDC),豪州小麦ボード(AWB),豪州酪農公社(ADC)およびNZ酪農ボードの実態調査を行ない,急速に進められている組織体制の改革の評価も含めて,輸出国家貿易による市場歪曲度の計量という観点から論点を整理した. 2.カナダにおける「隠れた」輸出補助金を生み出す価格差別による市場歪曲度の実用的な計測手法及び輸出補助金相当額(ESE)指標の開発と計測のためのデータ整備を行った. 3.輸出国家貿易が解体されることにより国際市場の歪曲性がどれだけ緩和されるかをシミュレーションすることによって輸出国家貿易に起因する国際市場の歪曲度を計量できる国際貿易空間均衡モデルを開発した.
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