本研究は平成10年度から11年度の2年間、本科学研究費補助を受けて行った共同研究の継続的発展的な研究である。 我が国の食品製造業は多様であり、大半が中小規模食品製造業で占めている。その就業人口は極めて多く、多様な食品を安定的に供給する重要な産業となっている。しかし、この食品製造業において、1980年代半ば以降、日米貿易・経済摩擦の下で、急速な「円高」を背景に海外への資本輸出が進み、海外産農産物を原材料とし、加工・半加工を行い「逆輸入」する食品製造業が増大している。一方、大規模小売店舗法改訂、食品流通構造改善法の制定などによる「規制緩和」が推進され、大手食品製造業者、大手スーパー、外食チェーンなどのビジネスチャンスの拡大をもたらし、経営の多角化、情報化、国際化などを通じて、食品流通におけるシステム化とシステム間の競争も強化している。その結果、これまで食品の加工・流通過程を担ってきた多くの中小零細企業の再編「合理化」が急速に促進されつつあり、食品製造業において大きな構造変化がみられつつある。このような厳しい状況の下で、地域食品製造業の持続的「再構築」は、地域就業機会の創出・地域経済の活性化や地域農業振興のうえで重要であり、検討されるべき緊急課題となっている。 地域食品製造業の持続的「再構築」の条件として、原料・労働力。製造技術など地域内資源の循環システム及び加工食品の流通システムの再構築、原料産地の農業政策的支援振興・育成と当該製造業者による緻密な消費者ニーズ分析に基くマーケティング戦略の研究などが重要であると思われる。
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