政策評価分析(PEM)と呼ばれる手法を、わが国のコメ部門に適用することにより、輸入制限を通じた市場価格支持、生産物を対象とする直接支払いとしてのJRIS、公的融資への利子補給などをつうじた投入財補助金、生産制限としてのコメ生産調整、および直接支払いのひとつである転作助成金を評価するモデル分析を行った。分析の特徴は、生産物市場だけではなく、生産要素市場をも分析枠組みに含めることにより、各種政策による消費者・納税者の費用と生産サイドにおける便益との関係を明示的に示し得るところにある。 ところで、コメ生産における生産要素の一つである水田は、高度な多面的機能を有するとされていることから、WTO交渉においても焦点のひとつになっている。本論では、この点を考慮しつつ、水田のもつ国土保全機能のうち洪水防止機能と土壌流亡防止機能の二つのみを取り上げ、政策変数とされた上記農業諸施策とこれら国土保全機能との関係もモデル化し、さらに金銭的な評価による費用便益分析の枠組みに加えた。 平成16年3月開催の日本農業経済学会大会シンポジウムにおいては、上記の研究成果とともに、近年注目されている自由貿易協定(FTA)によるわが国農業生産部門に及ぼす影響を評価するための方法論的な検討を行った。 平成13〜15年度間における研究成果は、重複箇所の調整等を行った上で全体を編集し、研究成果報告書としてとりまとめた冊子としてとりまとめた。また、米および発展途上国おける食料に関して、世界の需給状況を統計的にサーベーし、とりまとめ結果を『農林統計調査』誌および『新編農学大事典』に公表した。
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