本研究では、農村の地域資源が医療・保健・福祉と緊密に結びつき、それぞれの間に経済的循環と物的循環が形成されている地域社会をアグロ・メディコ・ポリスとして捉え、その意義と成立条件を解明するとともに、そのことによって農業・農村の持つ外部経済効果を生かすような新しい地域産業の可能性を検討することである。平成13年度は、その具体的事例として、長野県の佐久総合病院を中心とする地域(臼田町以下南佐久地域)を設定し、臼田町役場、農村医学研究所、農村保健研修センターなどの協力を得て実態調査と資料収集を行った。また、比較のために高齢化の進んでいる京都府和知町の実態調査を行った。この結果については、研究協力者・鎌田さやかとの連名で地域農林経済学会学会誌に報告論文として公表予定(平成14年3月号)である。 アグロ・メディコ・ポリスを福祉的側面、個人・集団の社会関係的側面、産業的側面、マテリアル・サイクルの側面から捉えるという分析枠組みは有効性をもつと考えられる。本年度は主に、産業的側面に重点を置いた。それは、佐久病院との直接的関係の程度に応じて三つのグループに分けられる。「一次圏」は病院や開業医、診療所といった医療機関、薬局、看護学院などからなる。「二次圏」は高齢者の介護・福祉サービス、給食やリネンなどのサービス提供主体などである。「三次圏」は食材や配送や病院での「ふれあい市」を開くグループなどから構成されている。産業的側面からだけでも、アグロ・メディコ・ポリスはこのように錯綜している。だから、佐久病院を取り囲む地域経済の循環過程をできるだけ実態に即して確定していくことが重要である。
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