本研究では、農村の地域資源が医療・保健・福祉と緊密かつ有機的に結びつき、それぞれの間に経済的循環と物質的循環が形成されている地域社会を、アグロ・メディコ・ポリスとして定義する。その具体的な実践例として長野県臼田町を取り上げ、佐久総合病院を中心とする地域社会の構造的特質とその歴史的形成過程をあとづけた。アグロ・メディコ・ポリスは産業的側面、マテリアルサイクルの側面、個人・集団の社会関係的側面から捉えることが可能であると考え、それぞれについての聞き取り調査ならびに3集落の農家に対するアンケート調査を実施した。 産業的側面からは佐久総合病院を中核とする資機材の流れ、病院スタッフやリネンなどのサービス提供部門関連産業就業者の消費活動および税金負担からの把握を試みた。その際に、医療機関との直接的なかかわりの程度に応じて第一次圏(病院、診療所、看護学校など)、第二次圏(介護・福祉サービス、給食やリネンなど)、第三次圏(食材提供、病院前の直売市グループ、有機農業グループなど)に分けて分析を進めた。マテリアルサイクルについてはまだ十分に検討ができていないが、家庭系有機廃棄物をコンポスト化する「堆肥製産センター」の活動について調査を行った。社会関係的側面については佐久総合病院の文化活動や「まごころ市」などの活動が、アグロ・メディコ・ポリスの形成に深くかかわっていることが明らかになった。
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