施設の更新時期が来ている農業水利施設において、従来のシステムでは高コストのため更新することが難しい施設がある。本研究では、インターネットの急速な普及に伴い、劇的にコストダウンがはかられたネットワークを中心とするIT(情報技術)を導入することにより、安価な農業水利管理システムの構築に関する基礎的な研究を行った。特に、携帯電話やPDAなどの携帯端末を利用することにより、従来は一方向であった水利情報の流れを、ユーザと管理者間で双方向化することにより、より柔軟な水管理を可能とする仕組みを構築できた。また、最新のセンサ技術を応用することにより、農業気象や土壌水分等の現場情報をリアルタイムで計測し、データベース化することに成功し、ダム貯水池などの水利施設から末端圃場までを緊密にリンクすることにより、より精緻な水管理や営農を可能とするシステム作りができた。以上、本研究の成果を整理すると、以下のようになる。 1.既存の気象観測システム(気象ロボット)に接続し、観測値を自動収集してデータベースに登録し、ネットワーク経由でアクセス可能とする接続キットを開発した。 2.三重県下の安濃ダム管理所において保存されていた水文・気象デジタルデータを最近のPCでも使える形式に変換し、データベース化した。 3.上記データベースを利用し、長短期流出タンクモデルによる流入量予測シミュレーションプログラムを作成し、携帯電話から文字情報および画像情報として取得できるシステムを構築した。
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