研究概要 |
初年度における研究は,手元にある全国市町村単位の農業センサスおよび土地利用面積データ,並びに県レベルの社会経済的データから階層的なデータベースを整備し,農地面積率を目的変数にした農地分布モデルを試行したところ,下記の点が明らかになった。 1.市町村レベルと県レベルの2階層モデルは,単層モデルよりも少数の指標から精度のより高いモデルを構築できるだけでなく,単層モデルでは捨象された地域特性をモデルに反映させることに成功した。 2.県レベルおよび市町村レベルの単層モデル,階層モデルのいずれでも,地形要因が農地面積のシェアを決定する支配的要因であった。 3.2つの都市化成分(兼業化と混住化)を明らかにしたが,これらの要因は,農地面積に対して異なる作用を及ぼしていた。 4.市町村レベルのデータに対して,マルチレベルモデルのレベル2の残差項を目的変数,県レベルの社会経済的要因(農協活動水準,農業投資,地方労働市場の展開度,農村コミュニテイの活力等)を説明変数とする回帰分析を行ったところ,労働市場の展開水準,農協のリーダーシップ,農業投資の水準など,地域レベルの社会経済的要因(間接要因)が農地分布を左右することが明らかになった。 同データベースを用いて,農地面積率の変化量を目的変数にしたマルチレベルモデルを現在計測中であり,それによって農地面積変化のドライビング・フォースが明らかになる(今年度中)。また,年度末になってようやく農林業センサスの最新版(2000)が入手可能になったため,現在,それを利用して岡山県を対象にした市町村-集落-年次(5年毎の時系列データ)の3階層データベースを構築しつつあるが,この分析作業は次年度に実施する。
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