研究概要 |
佐賀県南西部に位置する有明干拓の正面堤防を弾塑性有限要素法を用いた挙動解析の対象とした。ここでは,昭和61年度から平成2年度にかけて消波ブロックの設置等を中心にした堤防補強工事が行われた。本研究では,消波ブロック設置後の堤防本体および基礎地盤の挙動を解析した。解析に際しては,堤防直下および周辺地盤の有明粘土の物理・化学的性質と力学的性質について,既存のデータをもとに詳細に検討するとともに,解析に必要なパラメーターを決定し,有限要素モデルを構築した。有限要素解析結果と実測結果を比較した結果,透水係数kとして標準圧密試験から求まったkをそのまま使用したときの解析結果は,実測による堤防本体の沈下速度,沈下量と比較的よく一致した。 他方,有明粘土の物理・化学的性質と力学的性質(強度特性,圧密特性)について,諌早湾内の2地点でシンウォールサンプリングした試料を用いて実験的に検討した。その結果,採取地点により試料の塩分濃度が異なり,練返し強度や鋭敏比にかなりの違いがあることが判明した。不攪乱試料と練返し試料についての圧密定体積および圧密・膨張定体積一面せん断試験結果からは,不撹乱試料の強度増加率と内部摩擦角が練返し試料のそれらより,それぞれ15〜20%,5〜20%小さくなること,および不攪乱試料のHvorslevの強度定数は,粘土分の多い他地点の有明粘土のそれとほぼ一致し,比可逆比Λはこれまでに報告されている有明粘土のΛの上限値に近いことが分かった。また,ひずみ速度を種々に変えた定ひずみ速度載荷圧密試験を行ない,圧密降伏応力がひずみ速度の対数値の増加に対して直線的に大となることを確認した。さらに,側方応力を測定できる特殊な一次元圧密試験機を用いて,不攪乱試料と練返し試料の静止土圧係数K_0を測定した結果,正規圧密過程における不攪乱試料のK_0は,練返し試料のそれとほぼ一致することが明らかとなった。
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