有明海湾奥部では、干満差が大きく、大潮時には住之江港で約6mにも達する。有明海には、筑後川をはじめとする河川群から年間約80億トンの河川水が流入し、それとともに45万トンの浮遊物質(粘土鉱物)が運搬される。この結果、湾奥部には広大な干潟が発達しており、現在も発達しつづけている。このことから、排水樋門前面には浮泥が堆積し、樋門操作の障害となって背後地の排水に重大な影響を及ぽす。本研究では、有明海湾奥部の干潟の堆積メカニズム、有明粘土の自重圧密特性、およびスクリュー等による底泥巻き上げ特性を実験的に検討した。その結果(1)20日間樋門からの排水がない場合の澪筋での堆積状況調査の結果、澪中流部で5cm/日、下流部で3cm/日の堆積が観測された。(台風時には、1回の通過で澪部で約1mの堆積があった。) (2)観測桝、観測筒を澪部に設置した観測では、高含水比の浮泥を含めて平均20cm/l潮汐の堆積が認められる。これは潮汐による浮泥の運搬だけではなく澪部周辺域からの流入も含むと考えられる。この結果と(1)の結果から、干潟堆積のメカニズムを詳細に検証した。 (3)底泥が巻き上げられる流速を限界流速とすると、限界流速は底泥の含水比の関数として与えられた。特に干潟の堆積のシミュレーションに必要な高含水比の限界流速を求めることが出来た。 (4)スクリューによる流体力が、ほぼ噴流理論を満足し、スクリューの出力と底泥の巻き上げ効果を実験的に求めた。またスクリューの底面との角度による流体力の違いについても実験的に求めた。 以上のことより、本研究が干潟排水のための施設設計の基礎指針を与えるものと考える。
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