有明海湾奥部の干拓地に設置されている排水樋門前面の澪筋を確保するために、フラッシュ水による底泥の除去、漁船等のスクリューによる底泥巻き上げによる底泥除去が有効な方法と考えられる。澪筋維持施設の基礎資料として、底泥の堆積メカニズムを現地で調査し、自重圧密による底泥の限界巻き上げ流速の特性、スクリューによる底泥の巻き上げ特性を実験的に解析した。佐賀県七浦干拓排水樋門前面での調査の結果、澪部において樋門からの排水がない場合、5cm/day程度の堆積がみられる。上げ潮時には20cm/1潮の堆積があるが、停潮時に自重圧密により含水比が減少して、せん断強度が増加する。下げ潮時に堆積土のほとんどは沖合に運搬されるが、せん断力の増加で一部は流動できず、約2.5cm/1潮残留するものと考えられる。台風来襲による堆積は、100cmにも及ぶ結果が観測された。 円形回転水槽に現地の有明粘土と海水を入れて実験した結果、有明粘土の自重圧密開始から72時間後までの含水比、せん断強度及び限界巻き上げ流速の経時変化を明らかにすることが出来た。さらに、底面からの深さ方向の含水比鉛直分布の経時変化が明らかにすることができた。実験開始時の底泥の含水比900%程度であるが、底面から10cmの深さの地点で、6時間後540%、72時間後300%まで圧密が進行する。これにより底面附近でのせん断力も増加し、限界巻き上げ流速が増大する。650%の含水比で限界巻き上げ流速は40cm/sであるが、400%で90cm/sとなることが明らかとなった。 スクリューによる流れ特性は、噴流理論でよく表すことが出来、底面に作用する流れ特性を明らかにすることが出来た。スクリューからの流速は距離の-1乗で減衰し、流芯からの底面上の広がりはガウス分布に従うことが明らかとなった。 これらの結果が、澪筋維持施設の設計に役立つものと期待している。
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