沖縄本島南部の新第三紀島尻層泥岩地帯において実施された農業農村整備事業によって造成された切土法面について資料調査および現地調査を行った。また、降雨時に崩壊した泥岩切土法面の地盤調査と土質試験を実施した。得られた主たる成果は次のとおりである。 1.農業農村整備事業で造成された泥岩切土法面は直高20m以下であり、ブロック積擁壁工と植生工で表面を保護したものが多く、最近は法面保護工として琉球石灰岩の石積み工や植生を施した法枠工が多く採用されている。 2.泥岩切土法面には様々な変状がみられ、法面崩壊の発生頻度は施工からの経過年数が長いもので多く、密閉型よりも開放型の法面保護工を有する法面で多い傾向もみられ、法面崩壊は法面の劣化と関係していることが示唆された。 3.法面崩壊は日降雨量が100mmを超えると発生しやく、崩壊発生件数は連続降雨量が多いほど増加する傾向が見られた。また、法面崩壊は南東、南、南西向きで湧水のある法面に多く発生し、同一地区に集中する傾向も見られた。これより法面崩壊には小断層等の不連続面の存在と雨水の浸透が強く関係していることが示唆された。 4.施工後17年目に発生した法面崩壊は、切土による潜在不連続面の緩み、地表面と不連続面からの風化の進行による固結度の低下、大雨による不連続面の水圧増加などによって、不連続面のせん断強度が減少して発生したと想定された。 5.切土法面の点検・維持管理として、梅雨や台風等の前に亀裂、排水路の損傷等を点検し、異常が発見されれば早急に修復し、法面への降雨の侵入防止および法面内からの湧水の排水促進を行っておけば法面崩壊の発生を減らすことができると考えられる。 6.工事に先立って行われる調査ボーリング孔を地盤の地下水位や変位の自動観測等に活用することにより法面崩壊の危険性を予知できる可能性がある。
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