研究概要 |
1.玄米を氷点下で貯蔵する基礎研究 常温貯蔵や低温貯蔵に比較して,超低温貯蔵(氷点下での貯蔵)の品質保持効果が高かった。 2.籾の水分と凍結温度および凍結傷害 水分が20.8%以下の籾は-55℃まで冷却しても凍結しなかった。水分17.8%以下の籾は-80℃においても凍結傷害を起こさなかった。実用的に籾を貯蔵する際の水分は16%程度であるため,自然条件下で籾が凍結し凍結傷害が発生する恐れはない。 3.籾を氷点下で4年間超低温貯蔵する基礎研究 15℃以上の貯蔵温度では,長期間籾を貯蔵した際の品質劣化が大きかった。5℃以下の貯蔵温度では4年間にわたり新米と同様な品質を保持可能であった。北海道のような寒冷地においては,冬季の自然冷気を利用し米を氷点下に冷却することにより,米の貯蔵期間中の平均穀温を5℃以下とし,長期備蓄貯蔵の実用化が可能である。 4.米の最適な貯蔵温度 米は稲の種子として貯蔵中も生きている。米を低温で貯蔵すると米自身の生理活性や酵素活性が抑制され,貯蔵中の品質劣化も抑えられ,新米に近い食味を保持できる。また,米は凍らないので貯蔵中の温度は低ければ低いほど,米の高品質保持が可能である。 5.冬季の寒冷外気を利用した超低温貯蔵による籾貯蔵技術の確立 本研究により,冬季の寒冷な外気を貯蔵サイロ内に通風して籾の冷却を行うと,サイロ内の籾の穀温はすべて氷点下となり,実用規模の施設で超低温貯蔵が可能であることを実証した。超低温貯蔵した籾の品質は,従来からの低温貯蔵を行った籾の品質より高かった。 本研究により確立した超低温貯蔵による籾貯蔵技術は,自然エネルギである冬季の寒冷外気を籾の冷却に利用しており,冷却装置や電気エネルギは利用しない。すなわち,これは寒冷地の自然環境を有効に利用し,低コスト省エネルギで高品質米を供給する貯蔵技術である。この研究結果を基に,北海道では籾貯蔵施設の設置が進み,2003年に26ヵ所となり,その籾貯蔵能力は11万5千tとなった。
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