この研究では、遠赤外線ヒータを用いて、生椎茸を乾燥し、高品質の乾椎茸を作ることができる乾燥機の開発を目的とした。研究の概略をつぎに示す。 1)遠赤外線乾燥の前に、浸透圧脱水を加えて、乾燥時間の減少、製品の空隙率の増大、製品の収縮や変形、襞のくずれを抑え、さらに調理時の水戻し特性の改善を図ろうとした。食塩の溶液10〜20%で浸透圧脱水試験を45℃までの温度で試験したところ、全自由水分の20%までを除去することができた。 2)椎茸の乾燥特性を確かめるため、遠赤外線ヒータを用いて、乾燥実験を行った。ヒータの放射強度、入気の速度や相対湿度の違いが椎茸の水分や温度の履歴にどのように現れるかを知ることができた。すなわち、椎茸の乾燥速度は放射強度に従い、減率乾燥過程を示した。空気速度は乾燥速度に負の関係を示した。空気速度が大きくなると、ヒータの表面が冷やされ、放射強度が落ちるためである。入気の相対湿度の影響はほとんどなかった。ヒータの放射強度0.17W/m^2では、従来の方法である熱風乾燥に比較して、遠赤外線ヒータによる乾燥速度は倍増した。低放射強度では、高い水戻し率を示し、品質の優れた椎茸が得られた。 3)遠赤外線の一つの熱源で農産物を乾燥する場合のエネルギ効率を求める研究を行い、遠赤外線乾燥では高エネルギ効率を示すことが判明した。実験結果は、乾燥時間の関数として、農産物の含水率を予測する式を用いるだけでなく、乾燥効率を研究するためにも使用することができた。
|