研究概要 |
人工衛星データから推定した日射量やルーチン観測の気象データを入力することにより,コンピュータ上に広域にわたる作物生育の状況作り出すことを目標として研究を行った。本研究は,(1)衛星データによる日射量の推定,(2)アメダスデータの時別値メッシュ化手法の開発,(3)気象関係値推定モデルと作物生育モデルの結合による成育シミュレーションから成り立つ。 まず,衛生データによる日射量の推定については,GMS(ひまわり)可視データによる陸域用日射量推定モデルに改良を加えた。GMSの可視バンドで得られる惑星アルベドを用いた晴天域判定アルゴリズムに土地利用状況を考慮した閾値を用いたことにより,日積算値のRMS誤差を16%に低減できた。 次に,アメダスの気象値を1kmメッシュに拡張する手法開発については,気温・風速・日照時間の空間分布を計算するために,地形因子解析法に新たな考え方を盛り込んだモデルを開発した。これは,アメダスの測定値からメッシュデータを補間する際に,予測値は距離成分と地形成分を合計したものとして計算する手法である。本手法による推定値は従来法と比較して,精度が33%向上することが確認できた。 上述の気象関係の推定値を既存の作物生育モデルの入力値として用いることにより作物生育の状況をシミュレーションした。2000〜2002年のアメダスデータとGMSデータを入力して求められた収量と実際の収量とを比較した結果,RMS誤差は10a当り65.2kgとなり,気象実測値を用いた場合と同程度の推定精度が得られた。本研究の手法を用いて毎日の衛星データと気象データを利用して計算すれば,リアルタイムで標準的な生育状況を得ることができ,営農指導・気象災害解析・収量変動予測等への利用が期待される。
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