研究概要 |
中国の日光温室は典型的な持続的省エネルギー型温室であり,在来技術に立脚したものであると同時に,将来的に有効な作物生産システムとして多くの研究課題を内包している。本研究は,現地における日光温室の熱環境に関する詳細な連続計測実験ならびに日光温室の非定常熱収支解析とそれに基づく熱環境予測数学モデルの開発を行い,日光温室の蓄熱・放熱機構を主とする熱的環境形成機構を解明した。 1.日光温室の動的熱環境予測モデルの開発と検証 非定常熱収支解析に基づき,非植栽条件下での日光温室の熱的環境予測モデルを開発し,実測データとの比較によりその信頼性を検証した。室内気温と相対湿度のIA(Index of Agreement)は,昼間に適切な換気回数を与えて計算を行った結果,それぞれ0.96,0.81であり,予測モデルによる計算結果は実測結果とよく一致した。次に,基本モデルを改良し,作物(キュウリ)栽培条件下の実用的な日光温室熱環境予測モデルの開発を行い,実測データとの検証を行った。その結果,室内気温の計算値と実測値のIAは0.97と良好な結果が得られ,開発した熱環境予測モデルは十分な予測精度を持つものと考えられた。 2.厳寒期の日光温室における詳細連続計測実験 中国の北京市,長春市および瀋陽市における日光温室の現場において,熱収支に関わる気象・構造要因の連続計測実験を実施し解析を行った。室内気温は,厳冬期の夜間においても平均10℃以上の内外気温差を維持した。夜間の温室構造各部位から室内側への放熱量全体に対して床面土壌と北壁が占める割合はそれぞれ平均して75%,18%となり,これらが日光温室の夜間における室温維持に対して重要な役割を担っていることが明示された。 3.以上の研究結果を「研究成果報告書」(全93頁)として取りまとめた。
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