研究概要 |
[目的]腸管免疫ネットワークは,腸管免疫組織(GALT)において分泌されるサイトカインファミリーにより調節され,感染防御,抗ガン作用,抗アレルギー作用等の生体防御機構に関与する.乳業用乳酸菌由来機能性因子の腸管における免疫賦活化作用の解明は,多くの疾病を予防する機能性の食品開発につながる.本研究では,乳業用乳酸菌DNAによる腸管免疫ネットワークの制御を,GALTにおけるサイトカインファミリーを中心に解析し,活性DNAモチーフによる感染防御に関わる腸管免疫サイトカインネットワークの調節機構を解明することを目的とした.本年度は,乳酸菌DNAモチーフのブタ腸管におけるサイトカインネットワークの制御を,とくにTh1/2系サイトカインに注目し解析した.[方法]ブタのパイエル板および腸間膜リンパ節の細胞を乳酸菌由来DNAモチーフで刺激後,定量的PCR法により各種サイトカイン(IL-6,IL-12p40,IFN-γ)mRNAの発現量を測定した.[結果]初生仔ブタの回腸では成熟ブタのパイエル板や腸管膜リンパ節に比べ、DNAモチーフによるサイトカイン誘導は弱く,また初生仔ブタの腸管ではパイエル板が未発達であるため十分な免疫機構が備わっていない可能性が示唆された.成熟ブタにおいて,腸間膜リンパ節よりもパイエル板においてIL-6,IL-12p40およびIFN-γ mRNAの発現が強いことから,パイエル板がDNAの抗原認識に重要な役割を果たしていることが考えられた.成熟ブタの腸間膜リンパ節では、DNAモチーフによりIL-6 mRNAおよびIFN-γmRNAがほとんど発現していなかったが,一部の乳酸菌DNAモチーフ刺激により,IL-12p40mRNAの発現が約23倍に増強された.一方,DNAモチーフ刺激により,成熟ブタパイエル板細胞ではIL-6(約23倍),IL-12p40(約10倍)およびIFN-γ(約25倍)mRNAが強く発現した.以上のことから乳酸菌DNAモチーフは,腸管免疫系を活性化し,とくにパイエル板において細胞性免疫(Th1様応答)を誘導することが示唆された.
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