研究概要 |
1.1,2-プロパンジオール(1,2-PD)生成菌の分離・同定とサイレージ添加剤としての特性評価 ビール粕を主体とするTMRサイレージから、1,2-PD生成能を有する乳酸菌Lactobacillus buchneriを分離・同定した。本菌株を黄熟初期のトウモロシに添加してサイレージを調製し、発酵特性、微生物数および可溶性糖類の変化を調べた。その結果、以下のことが明らかとなった。 (1)L.buchneriを添加すると、貯蔵期間の延長にともなって乳酸と酵母数が減少した。酢酸は逆に増加しており、菌接種したサイレージの好気的安定性は向上した。 (2)1,2-PDは菌接種したサイレージでのみ認められ、乳酸の減少および酢酸の増加に対応して生成量が増加した。4ヶ月間貯蔵したサイレージでは、約5%DMという多量の1,2-PDが蓄積していた。 (3)好気的安定性の向上は酢酸量の増加と酵母数の減少が原因と考えられたが、未同定の抗菌性物質が生じている可能性も示された。 2.飼料中1,2-PDのルーメン内分解性と採食量調節因子としての評価 IN vitro培養実験を行って1,2-PDのルーメン内分解性を調べるとともに、飼料に2%DMの1,2-PDを添加してヤギによる採食試験を行った。その結果、以下のことが明らかとなった。 (1)1,2-PDはルーメン内微生物によって分解され、'その分解速度は乾草よりも穀実を主体とする飼料を給与した場合に大きいことが示された。また、飼料の継続的摂取にともなう分解速度の適応的上昇は認められなかった。 (2)2%DMの1,2-PDは、穀実主体飼料の採食量に影響しなかった。また、選択採食によって調ぺた嗜好性も変化しなかった。 (3)2%DMの1,2-PDを含む飼料を摂取しても、循環血およびルーメン液中に1,2-PDは検出されなかった。
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