本研究は、家畜の免疫増進や抗病性を向上させるサイトカインや抗菌ペプチドを遺伝子組換え技術を応用して牧草へ導入し、家畜免疫増強因子を付与した牧草を育成するものである。 上記の研究目的を達成するためには、まず初めにその基本操作となる効率的な遺伝子導入法の確立とその発現様式の調査が重要である。用いる牧草種は、イネ科牧草のバヒアグラスとペレニアルライグラスおよびマメ科牧草のバーズフットトレフォイルである。これら3草種はバヒアグラスとペレニアルライグラスではパーティクルガン法、バーズフットトレフォイルではアグロバクテリウム法において遺伝子組換えが可能であった。 そこで、遺伝子組換え法を確立したバヒアグラスおよびバーズフットトレフォイルにおける導入遺伝子のGUS遺伝子発現とその様式について調査するとともに、バヒアグラスではT1(遺伝子組換え体の第1世代)の採種とその後代におけるGUS遺伝子発現も調査した。バヒアグラスにおけるGUS遺伝子発現では、葉、茎および花粉において認められたが、特に花粉における発現は強いものであった。また、T1種子におけるGUS発現では、その発現様式が1:1であり、これまで他殖性植物において報告された組換え遺伝子の検出結果と一致した。一方、バーズフットトレフォイルにおけるGUS遺伝子発現では、葉、茎、葉柄、根および根粒において認められたが、最も強く発現が認められた組織は葉丙、根端および根粒であった。これは、用いたプロモーターが分裂組織で強発現する特性によるものと示唆できる。 現在、バヒアグラスおよびバーズフツトトレフオイルにおいてGUS遺伝子サイトに抗菌ペプチドを導入したプラスミドベクターを導入し、再分化個体を得ているため、生長した後に導入遺伝子の確認と発現を遺伝子およびタンパク質レベルで調査するつもりである。
|