本研究は、家畜の免疫増進や抗病性を向上させるサイトカインや抗菌ペプチドを遺伝子組換え技術を応用して牧草へ導入し、家畜免疫増強因子を付与した牧草を育成するものである。 上記の研究目的を達成するためには、まず初めにその基本操作となる効率的な遺伝子導入法の確立とその発現様式の調査が重要である。前年度は、イネ科牧草のバヒアグラスとペレニアルライグラスおよびマメ科牧草のバーズフットトレフォイルにおいて遺伝子組換え法を確立することができた。今年度は、前年度のバヒアグラスで確立した方法と同様なパーティクルガン法を用いてローズグラスにおける遺伝子組換え法について検討し、さらに、導入遺伝子のGUS遺伝子発現とその様式についても調査した。 ローズグラスは、ガン処理後不定芽組織を15日間無選抜で増殖させることにより形質転換カルスを得ることができ、多くの植物体を再生することができた。両草種の形質転換体はPCR法により導入遺伝子を確認したところ、GUS遺伝子では1.1kbp、bar遺伝子では0.34kbp上に特異的な増幅バンドが検出された。得られた形質転換体におけるGUS遺伝子発現は、全ての組織、器官で認められ、バヒアグラスではT1種子でも発現を確認することができた。そこで、バヒアグラスおよびバーズフットトレフォイルにおいてGUS遺伝子サイトに抗菌ペプチドを導入したプラスミドベクターを導入し、再分化個体を得て、導入遺伝子の確認と発現を遺伝子およびタンパク質レベルで調査したところ、導入遺伝子を確認することができたものの、タンパク質レベルでの発現は低いものであった。
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