本研究ではビフィズス菌をはじめとするいわゆる腸内有用細菌とされる乳酸菌の腸上皮への付着機構を明らかにする目的として、菌体の有する糖鎖結合性を解明することとした。その結果、Bifidobacterium bifidum、Lactobacillus reuteriおよびLactobacillus acidophilusに属する菌株で複合糖質糖鎖に結合することが見いだされた。興味あることに、これらの菌株の一部はHelicobacter pyloriなどの病原菌の細胞レセプター分子への結合を競合的に阻止することが見いだされ、感染予防へ利用できることが証明された。 また、糖鎖結合性を示すそれぞれの乳酸菌株から結合タンパク質の同定を試みたところ、いずれの菌株も菌体表層の50-60Kdaタンパク質がその結合に関与していることが示唆された。そこで、それぞれの遺伝子をクローニングし、塩基配列を解析した。さらに、大腸菌でそれぞれのタンパク質を組み換えタンパク質として発現させ、糖鎖結合性を調べたところ、L. acidophilusで発現していた分子量50Kdaのタンパク質は糖タンパク質糖鎖中のマンノースに結合することが示された。一方、他の2株で見いだされたタンパク質は特異的に糖鎖に結合することは見いだされなかった。
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