1)ルーメン微生物混合系における硝酸・亜硝酸還元に及ぼすプロトゾアの影響 ルーメンにおいてプロトゾアがどのように硝酸・亜硝酸還元に関与するかを調べた。プロトゾアを除いたバクテリア区と比べ、プロトゾアとバクテリアの共存区では硝酸還元が速くなり、それ以上に亜硝酸還元が速くなった。その結果、亜硝酸の蓄積濃度が低下し、蓄積時間が顕著に短縮された。このようなプロトゾアの影響は、プロトゾアによるH_2と乳酸の生成によるものと考えられた。プロトゾアは易発酵性糖質を一旦貯蔵し、バクテリアよりも緩徐に分解するため、特に亜硝酸が蓄積する時期に硝酸・亜硝酸還元菌にH_2と乳酸を供給する点が重要であると考えられた。プロトゾアの生存や発酵は2mM以上の亜硝酸で著しく阻害されたので、プロトゾアはこれ以下の濃度の時に大きな影響を及ぼすと考えられる。 2)Selenomonas ruminantiumの硝酸還元速度および硝酸還元酵素に及ぼすエネルギー基質の影響 主要な硝酸・亜硝酸還元ルーメン菌であるS.ruminantiumの硝酸還元速度および硝酸還元酵素(NaR)の合成を左右する要因について調べた。硝酸還元速度と菌体あたりのNaR含量の間に平行関係が見られたことから、本菌の硝酸還元速度はNaRの量によって左右されると考えられた。また、菌体あたりのNaR含量は増殖速度とは逆の関係にあった。増殖速度と菌体内のATP濃度との間には正の関係があり、またADPおよびAMP濃度との間には逆の関係があった。NADH/NAD比も硝酸還元速度および菌体あたりのNaR含量と正に相関した。これらの結果から、NaRの合成はエネルギーと電子の供給状態に応じて調節されていると考えられた。この場合、アデニンヌクレオチドとピリジンヌクレオチドが調節因子の一つとして働くと思われる。NaR含量は硝酸の存在下で増加したので、NaRの合成は硝酸により促進されると考えられる。
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