研究概要 |
発酵乳中の抗酸化ペプチドの生成機構について調べ,以下のような結果を得た. 1.Lactobacillus delbruekii subsp. bulgaricus IFO13953は脱脂乳中に少なくともαs2-CN (f113-126)とκ-CN (f96-106)の2種類の抗酸化ペプチドを生成することが知られた.そこでその生成に関与するプロテアーゼとして細胞表層プロテアーゼが考えられたので,本菌の休止菌体によるカゼインの分解について研究した.すなわち、培養後得られた菌体とカゼインが混合され、3時間反応させ、そして生成するペプチドを逆相系カラムを用いて分析した.その結果、反応時間が経るにつれて多くのペプチドが生成された.次いで生成ペプチドの一次構造について調べた結果、その多くはβとαs2-カゼイン由来で、κカゼイン由来ペプチドも認められた.しかし、αs1-カゼイン由来のペプチドは見出されなかった.また、抗酸化ペプチドであるαs2-CN (f113-126)は休止菌体系の反応で見出されたが、κ-CN (f96-106)は見出されなかった. 2.これらペプチドを生成する細胞表層プロテアーゼの酵素学的性質について休止菌体を用いて調べた.すなわち、休止菌体とカゼインを反応せしめ、反応後の生成ペプチドを,フォーリン・フェノール法で分光光学的に測定した.その結果、休止菌体での本酵素の至適pHはpH5.0-8.0までほとんどpHの影響を受けなかった.また、至適温度は45℃と推定された.活性におよぼす各種阻害剤による影響について調べた結果、本酵素はPMSFにより強く阻害されることからセリンプロテアーゼと推定された.
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