発酵乳より抗酸化ペプチドを検索し、その構造と生成機構について調べ、以下のような結果を得た. 1.各種乳酸菌を脱脂乳で培養し、培養物の抗酸化活性を測定した結果、Lactobacillus delbruekii subsp. bulgaricus IFO13953株に高い抗酸化活性を見出した.そこで培養物から抗醸化活性成分を検索した結果、κ-CN(f96-106)とαs2-CN(f179-187)であることが判明した. 2.これらペプチドの生成に関与するプロテアーゼとして細胞表層プロテアーゼが考えられたので、本菌の休止菌体によるカゼインの分解について明らかにした.すなわち、培養後得られた菌体とカゼインとを3時間まで反応させ、生成するペプチドを逆相系カラムによるHPLCで分析した.その結果、反応時間が経るにつれて多くのペプチドが生成された.次いで生成ペプチドの一次構造を調べた結果、その多くはβとαS2-カゼイン由来で、κ-カゼイン由来も認められた.しかし、αs1ペプチドは見出されなかった.また、β-およびα52-カゼイン由来ペプチドはC-末端側に局在していた.抗酸化ペプチドであるαs2-CN(f179-187)は休止菌体系の反応で見出されたが、κ-CN(f96-106)は見出されなかった. 3.これらペプチドを生成する細胞表層プロテアーゼの酵素学的性質について休止菌体を用いて調べた.その結果、休止菌体での本酵素の至適pHはpH5.0-8.0においてほとんど活性が変化しなかった.また、至適温度は45℃と推定された.活性におよぼす各種阻害剤による影響について調べた結果、本酵素はPMSFにより強く阻害されることからセリンプロテアーゼと推定された.
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